2006年05月01日

風景を守り通せるか

 NHKのドキュメンタリー番組「クローズアップ現代」を見た。今回の特集は「"日本の風景"が消えてゆく」と題し、萱葺き屋根や里山などの貴重な景観が消えようとしている現状を取材したもの。以下は公式サイトからの引用。
“日本の風景”が消えてゆく

 少子高齢化、過疎化が極限まで進んだ地方の農山村。10年で日本列島から5千の集落が消えた。日本人の原風景である里山や散居村は「絶滅の恐れがある風景」と言われ、今月、絶滅危惧生物に倣って、「風景」のレッドデータブックも作られた。国は、昨年6月「美しい景観は国民の財産である」として景観法を施行し、各地の景観保護支援に乗り出した。

 しかし、夏涼しくて冬暖かい茅葺き屋根や村の鎮守の森など、原風景の多くは集落の助け合いで維持されてきたもので、地域共同体の基盤が加速度的に衰退する中、風景の消滅に歯止めをかけるのは容易ではない。日本各地の失われゆく「風景」の現場で何が起きているのかを探り、何とかして「風景」を取り戻そうと模索する地域の取り組みなどを取材。茅葺き屋根の風景の残る福島県南会津町から中継で伝える。

 日本には萱葺き屋根や棚田といった原風景が数多くあり、これらは日本人にとって単なる文化以上の重みがある。「春の小川」や「赤とんぼ」といった童謡に表される日本の原風景が過疎化や都市化によって失われつつある今、これらを守り通していくことは急務といえる。

 番組では萱葺き屋根を保存するために萱を集め、ボランティアを募って葺き替える様子が紹介されていた。だが懐古趣味だけでこの問題を解決することはできない。集落が消えていくのはそこが生活に不便だからであり、ある意味では必然ともいえる。ボランティアを募るとはいえ、こうした方法で萱葺き屋根(を含むこの地域の風景)を維持するためには人的・物的なコストはかなりのものになるはずだ。

 こうした議論をするたびに引き合いに出されるのは欧州諸国の伝統的な建築物や自然の風景だ。ナショナル・トラストのような支援制度も整っている。それらを紹介し、比較することで日本は遅れているとする論調はメディアを問わず見られる。

 だが、欧米の文化に比して日本のそれはより人の手が加わるようにできている。建物だけを作って完成したら終わりではなく、これを維持していくこともまた文化のうちに含まれるのだ。式年遷宮はこれを端的に示している。
 
 このような文化の違いは両地域における建築物の相違に表れている。西洋の建築物は主に石で構成され、風雨に強く、寒い冬を暖かく過ごすための工夫が見られる。築50年から60年を経た家は数多く残り、建て替えなどは日本ほど頻繁には行われない。これに対して日本の(伝統的な)建築物は主に木と紙、及び土で構成されており、湿気の多い気候に適している。また、材料の入手性が良い(良かった)ことと、地震が頻発することから改築や再生を比較的容易に行うことができる。このような地域ごとの文化の違いを考慮に入れない議論は底の浅いものでしかない。

 従って、日本の伝統文化を維持するには衣食住のすべてを伝統的な方法でまかなわなければならない。では、その伝統的な方法を維持するための膨大なコストは一体誰が支払うのだろうか?観光地化すれば経済的な問題は解決するだろうが、後継者は誰が育てるのだろう?真に日本の原風景を守る気があるなら、これらの点から目を逸らしてはいけないと思う。
posted by 火銛 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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