2005年08月27日

携帯防災のすすめ(その3)


・情報収集

 ある程度安全を確保したら、次に必要なのは情報収集だ。今や日本人のほとんどが持っている携帯電話はカメラ、webブラウザ、GPS、MP3プレーヤーなど、すでに個人用のコンピュータといえる段階にまで進化している。iモードやEZwebなどのインターネット接続サービスは音声通話と同じく有効なコミュニケーションの手段たり得る。我々はこれらを積極的に活用すべきだ。無論、電池使用の急速充電器を忘れてはならないが。

 ただし、災害時に携帯電話を利用する場合、重大な問題がある。新潟県中越地震以降、電話が通じない状況でも携帯メールは使用可能といわれているが、この認識は半分は正しく、半分は間違っている。第2世代までの携帯電話は通話とメールを別々に管理していたが、第3世代はこれを一括して管理しているためにデータ通信も規制される。携帯電話各社では分離規制に対応しつつあるようだが、先日の千葉県北西部地震の際もauやNTTドコモの第3世代型機を対象に通話(データ通信を含む)規制が行われた。

 参考サイト:IT Proニュース

 ボーダフォンの第3世代型機ではこの通話規制が行われなかったが、私はこれを加入者の減少によって回線に余裕ができていたためと判断している。なおツーカーに関しては電話機が第2世代型のみであることと、東名阪地域以外ではボーダフォンの回線をローミングしていることから通話規制は起こらないものと考えていたが、実際は通話とデータ通信を一括管理していたために回線が輻輳し、通話規制が行われた。

 また、ドコモとauは両社が運営する災害用伝言板サービスの相互リンクによる連携を行うと表明している。

 参考サイト:KDDIプレスリリース

 携帯電話に加えて、ラジオがあるとなお良い。ソニーや松下など複数のメーカーから通勤用の小型ラジオが発売されている。これらのうち一部の製品はテレビの音声も聞くことができるので、情報収集の際の選択肢が増える。

 通常、防災用品としてのラジオを選ぶ際は手回し式の発電機を内蔵する製品を選ぶのがセオリーだが、これらは例外なく一定の大きさと重さを占め、防災セットとしての携帯性を著しく損ねてしまう。かろうじて携帯できるものとしては、以下の製品が挙げられる。

LEDダイナモ・ステーション(ラジオ付き)LEDダイナモ・ステーション(ラジオ付き)
◆レスQ隊◆多機能!自家発電 帯充電器 ラジオ◆レスQ隊◆多機能!自家発電 帯充電器 ラジオ

 紹介した2製品はライトや携帯電話への充電の機能も兼ねているものの、携帯性は通勤用ラジオに及ばない。発電機つきの製品を携帯するよりは予備の電池を増やすほうが現実的と考える。

 また、ラジオから流れる音楽の生理的作用も無視することはできない。音楽再生機能付きの携帯電話にも言えることだが、音楽には精神を落ち着かせ、感情を正常化する作用がある。云うまでもないことだが、災害発生時は自然への恐怖や知人を失う悲しみで気分が滅入り、不安になることだろう。だが、切羽詰まっているときにこそ娯楽は一服の清涼剤たり得る。そのような時に音楽を聴くことによって、少しでも精神的な安定を得ることができれば、いずれ訪れる避難生活や復興も乗り切ることができるのではないかと思う。

 参考サイト:音楽療法入門〜音楽の作用と機能
posted by 火銛 at 22:35| Comment(8) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月24日

携帯防災のすすめ(その2)


・ホイッスル

 地震で瓦礫などに閉じ込められた場合は外部に助けを求めることになるが、大声を出すのは意外と体力を消費する。そんな時にはホイッスルが役に立つ。私が使用しているのはエマージェンシーカプセルと一体になったタイプで、中には住所、氏名、血液型などを書いた紙を入れてある。これを携帯していれば輸血が必要となった時は即座に血液型を伝えることができるので、生存の可能性が上昇する。

SOSホイッスル・IDカード付きこういう物。

 ホイッスルはさほど大きくないので、キーホルダーやペンダントなど様々な形で身に付けることができるのが特徴といえる。ライトがついているものや、カラビナになっているものなど、メーカーによって様々な機能を付加する工夫が凝らされている。


・ライト

 日本においてはすでに珍しくなったが、平時でもごくまれに停電が起きることがある。私にも入浴中に停電に遭遇し、非常に心細く感じた経験がある。まして災害時ならなおさらだ。そんなわけで、ライトを最低1本はセットに入れておきたい。

 使用するライトはあくまでも非常時の明かりとして用いるためのものなので、消費電力が少ないLED(発光ダイオード)のものを選んだ。LEDの光は拡散する性質があるので、周辺を満遍なく照らしたい場合に便利だ。

 ライトの最も重要な条件は明るさだ。シュアファイヤーなど明るさを極限まで追求した商品もあるが、私はこれらの製品を推奨しない。もともとシュアファイヤーは軍や警察の特殊部隊が使う目潰し用ライトのため、運用コストが非常に高い。専用のリチウム電池を使用し、交換用電球も非常に高価だ。特殊部隊は任務遂行のために、経済性を犠牲にしてでもこのような装備を取得する必要があるが、我々のような一般庶民に手が出るものではない。したがって、非常時に備えるためのライトは電池の持続時間、携帯性などを重視して選ぶ必要がある。

 単4電池やボタン電池を使用した小型のLEDライトは各社から様々な製品が発売されているので、性能や形状などを吟味した上で選びたい。

 参考サイト:Flashlight Fan

 また、使用中に電池が切れたときに備えて予備の電池を持っておくのは当然のことだが、予備用としてケミカルライトを持っておくのもひとつの方法である。ケミカルライトとは、プラスチック製のチューブの中に二種類の薬品を混ざらないように封入し、これを曲げることによって内壁が破壊され薬品を混合、発光するライトである。100円ショップなどで購入できるので、使い捨てということを差し引いてもバックアップに使えるだろう。

 
posted by 火銛 at 14:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 防災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月20日

携帯防災のすすめ(その1)


・救急用品

 地震などの災害が起こった場合、身の回りのあらゆるものが凶器となる可能性がある。これらによって傷を負ったときに備え、止血など応急処置を行うための装備を携帯する必要がある。応急処置を行うために必要な物品を以下に示す。

・消毒液
 創傷部の殺菌・消毒に使用する。イソジン、オキシドール、マキロンなど様々な消毒液が市販されているが、私は災害時に有用なのはイソジンかエタノールだと考えている。それぞれ創傷部の消毒以外にも活用できるためである。イソジンは水の殺菌、エタノールは気付けにそれぞれ応用できる。なお、私はエタノールを用意し、携帯している。

・清浄綿もしくはウェットティッシュ
 用途は消毒液に同じ。またこの他にも移動中にかく汗を拭き取ったり、手拭などにも応用できる。

・ガーゼ及び包帯
 創傷部の圧迫止血及び保護に使用する。ガーゼは1枚ずつ包装されているタイプが良い。包帯も、包帯止めが不要な自着性のものを推奨するが、これは材料の一部に天然ゴムラテックスを使用しているので、ごくまれにラテックスアレルギーの症状を呈することがあるので、注意されたい。

 参考サイト:日本ラテックスアレルギー協会

・絆創膏
 軽度の擦り傷や切り傷などに使用する。予備も含めて10枚程度あれば良いと思う。

・三角巾
 骨折、捻挫などの際に患部を固定するのに用いる。応用範囲が極めて広く、結び方によって全身各所の固定に使用することができる。

 その他の薬剤、物品についての参考サイト:ファーストエイド・キット(救急セット)の作り方ニュージーランド・トランピング&温泉情報内)

 なお、創傷部の消毒と保護はあくまでも避難所もしくは医療機関に到着するまでの応急処置である。可能ならば到着後、閉鎖湿潤療法を行うのが望ましい。簡潔に述べると、閉鎖湿潤療法は従来の外傷治療とは全く異なり、消毒を行わなず、ガーゼも使用しない。創傷部をラップで覆うことで組織液が傷口を覆い、人体の自然治癒力を最大限に利用する。詳細に関しては以下のサイトを参考にされたい。

 なお個人的な意見だが、破傷風など感染症の懸念を拭いきれないため、消毒は必要であるように思うが、詳細は不明。医療関係者からのコメントをお待ちしている。

参考サイト:正しいケガ(傷)の治し方(同上)
       新しい創傷治療

注意:当サイト及び参考サイトの記事を元に閉鎖湿潤療法を実践し、結果何らかの損害を被ったとしても当サイト管理人は一切の責任を負わない。


08/21追記
 これらの救急用品を携帯するのには、このような小型バッグを使うとよいと思う。
ドイター:ファーストエイドキットバックS【DEUTER バッグ】ドイター:ファーストエイドキットバックS【DEUTER バッグ】

 試してみたところ三角巾1枚、包帯1本、ガーゼ4枚、絆創膏10枚、清浄綿3枚、消毒液50ml、軟膏1本を入れることができた。まだ少々余裕があるので、やけどの治療に使う油紙などを入れておこうと思う。

 またこれらの救急用品を効果的に利用するために、日赤救急法の講習を受けておきたい。止血法、三角巾の活用法、人工呼吸、心臓マッサージなどの応急処置を学ぶことができる。私は9月の上旬に受けに行く予定。講習会へ行く時間がない方も、これらの書籍を読んで知識を身に付けておくだけでも、何もしないよりは良いと思う。これらの知識は、災害時だけではなく日常生活においても役に立つので、活用して頂きたい。

08/30追記
 (ニュージーランド・トランピング&温泉情報の秋場研氏より、病気・怪我の可能性のある人にアルコールを与えるのは禁忌であるとの指摘を頂いた。また、感染症に関しても調査し、項を改めて紹介する。
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2005年08月18日

携帯防災のすすめ(前書き)

 8月16日昼、宮城県で震度6弱の地震が発生した。地震の揺れは東北から近畿にかけてかなり広範囲に伝わり、私が住む神奈川県でも震度3の揺れが観測された。7月23日のエントリに書いたように、首都圏でも最近は強い地震が起きている。日本は地震国であるがゆえに、地震による災害からは逃れることができない。従って、災害を未然に防ぐには各人がこれに備える必要がある。

 私は昨年から、通勤・通学用の鞄に防災セットを入れて常に携帯していれば、突然の災害にも対応できるのではないかと考えていた。しかし、当時はまだアイデアが完全でなく、また個人的にも忙しかったために発表することができなかった。

 結局はすでに先を越されてしまったようだが(防災:明日はわが身など)、携帯用の防災セットの作り方について何回かに分けて書きたいと思う。まずはじめにこの防災セットを作るに当たっての目標を列挙したいと思う。

・体積は1.5リットル程度、質量は2kg以内
 これは、日常で携帯するに当たってストレスを感じないように可能な限り小さく、軽くする必要があることによる。一般的なデイパックの容量が20リットル程度であるので、その5〜10%程度が妥当と判断した。

・最低6時間程度の行動
 あくまでも最寄りの避難所もしくは自宅までの避難用であり、家庭用の防災セットに要求される3日分の水及び食糧の携帯は想定していない。というよりもまず不可能である。携帯性を確保するためには行動時間を犠牲にせざるを得ない。

・汎用性・信頼性のある装備
 汎用性があるということはすなわち応用できる範囲が広いということである。応用範囲が広ければ、想定しなかった状況にも対応できる可能性は上がる。また、高価な装備が故障して使えなかったなどということのないように、可能な限り単純な原理を用いているものを選びたい。

 今後は災害時に必要とされる各物品を優先度の高い順に紹介する予定。また、いつ再び地震が起こるか分からない状況でもあるので、早めの更新を心がけたい。
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2005年08月14日

餌が食べる牛

 映画を見たあと、友人と昼食をとってからしばらく遊び、マクドナルドに寄って休憩していた。マックでは品物を載せるトレイに広告の入った紙が置いてあるのだが、友人がこれに書かれている文章に気づいた。以下引用(改行はそのまま)。

ファーストフード。
  そのおいしさや安心は、
スローに
  つくられています。

水の一滴。
草の一本。
餌から守られた
牛たちは、
雲が恵む
緑の大地で、
ゆっくり、
しっかり、
育てられていた。
オーストラリア、
ビクトリア州
アラワタ牧場。
午前7時2分。

 『餌から守られた』とは、つまりこういうことだろう。この牧場では、毎日餌が牛を食べてしまうので、牧場主はそのような事が起こらないよう常に目を光らせている。

 牛が目を覚まし、牛舎の外へ出る時は餌が襲ってきた時に備えて一頭につき二人の武装した警備員を護衛として配置しておく。一人は牛の右前方、もう一人は左後方に占位し、全周警戒を怠らない。放牧中も然り。牛舎から放牧場へ向かう道と、放牧場の外周には警報装置と対人地雷が備えられ、餌の進入を警戒している。さらに、万一餌の襲撃があった場合のために予備兵力として完全武装の二個小隊を牛舎の警備担当として配置し、襲撃の際は迅速にこれを殲滅する。牧場は山間部にあるために遮蔽物も多い。かくして、アラワタ牧場はテロリストも裸足で逃げ出す難攻不落の要害として君臨するのである。

 …ではこの牧場の牛は普段、何を食べて生きているのだろう?
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『亡国のイージス』感想

 現在公開中の映画『亡国のイージス』を友人と観に行った。7月30日のエントリでも述べたとおり、原作を読んでいたこともあって非常に楽しみにしていた。以下感想(ネタバレ防止のため反転)。

 やはり、原作を読んでから映画を観るべきではない。『ローレライ』の時にも感じたことだが、人物描写が全体的に足りないように感じられた。先任伍長が艦内の二酸化炭素消火設備を起動する場面で、原作にある『おれの船から出て行け!』という台詞が映画ではカットされていたり、ヨンファがテロに走る動機が不明瞭だったり、ジョンヒの接吻(人工呼吸なのだが)から続く説得がカットされていたり、重要(だと私が考えている)場面がいくつかカットされている。

 確かに、650ページに及ぶ超長編を2時間にまとめる関係上、どうしてもいくつかの場面は削らねばならないだろう。しかし、肝心の護衛艦を占拠する理由が不明瞭では、観客はヨンファに感情移入することができない。そのためにヨンファが『ただの悪役』に成り下がっているのは残念だ。

 期待していたリアリティだが、こちらは本物を使用しているだけあって素晴らしいものだった。協力した防衛庁も良い宣伝になると踏んだのだろう。だからなのか、クレジットで協力した部隊と艦名が出ていたのはよかったと思う。ただし、疑問点が一つある。『いそかぜ』を沈めるためにF-2支援戦闘機に攻撃命令を出す場面で、阻止限界線を越える前に三沢から発進して間に合うのだろうか。三沢基地から東京湾までは直線距離で約640km(=346NM)である。1,000ktで飛んだとしてもおおよそ20分程度かかる計算になるのだが、果たして間に合うのだろうか。見ていたときはあまり気に留めていなかったので詳細を覚えていないのだが、気になるところである。


 映画を見たあと、ロビーに展示されていた撮影用の制服を見ていたときに50代半ばくらいの男性が肩の階級章について(頼みもしないのに)講釈してくれた(しかも、あとで確認してみたらいくつか間違いが含まれていた)。しかし、話は段々と脱線し、最近の若者は根性が足りないという話になっていった。最近の若者としては面白くないので、何か反論をしようと思ったのだが、面倒なので放っておいたら去っていった。

 私は映画を見るときには大概パンフレットを購入するのだが、今回は1,000円と高価だったので見送り、代わりに『爆砲団子』という餅団子を購入した。これは12個入りのうち2個に激辛唐辛子入り餅団子「GUSOH」が含まれているというロシアンルーレットじみた代物。ちなみにGUSOHとは劇中に登場した1リットルで1,000万人を殺害できる化学兵器のこと。確率が1/6なのはリボルバーの装弾数に掛けているのか、あるいは劇中に登場した組織『ダイス』に掛けているのかは定かではないが、家族に見せたところ不評だった。仕方がないので1つ適当に選んで食べてみたところ、見事にそのGUSOH入り団子を引き当ててしまった。辛い。とても辛い。家族に喜ばれないものを買った罰かと思った。
posted by 火銛 at 21:34| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月09日

郵政民営化は悪政か

 小泉首相は昨日、憲法第7条の規定に基づき衆議院を解散した。参議院で郵政民営化法案が否決されたことによるもので、今回の選挙は事実上、この郵政民営化に対する国民の信を問う形となった。

 郵政民営化は小泉首相が就任した当初から公約として掲げられていたことであり、審議に入ってから掌を返したように反対するのは自民党の公約にも反する。前回の衆院選では小泉首相の方針を支持するか否かが問われたが、この時自民党は苦戦したものの公明党との連立によって辛くも難を逃れた。

 この時に立候補し、当選した議員はすべて小泉首相の提示した方針に賛同しているものと理解していたが、今になって何故自民党内に反対する議員がいるのか。小泉首相を支持した有権者に対する背信ではないのか。

 私は郵政民営化を支持している。民営化するとコスト削減のために離島や過疎地から郵便局がなくなると反対派は云うが、軽々しくそのようなことが行われるとは思えない。過去、国鉄がJRに分割・民営化された後に北海道でいくつかの路線が廃止されたが、これは利用者が1日一けた台にまで落ち込んだ状況で、さらに数少ない利用客に対してもバス転換など代替策を十分に検討した上での決定である。最近では広島県の可部線の一部区間が廃止されたが、やはりバス転換が行われている。郵政事業も鉄道事業と同じく公共性が高いものであり、野党が主張するような経営が行われるとは考えにくい。

 民主党は官僚出身の議員が多いにもかかわらず、この間まで官僚組織だった郵政公社を信用していないのだろうか。それとも、彼らが官僚だった頃の経験からの判断だろうか。国会中継で展開される野党議員の主張を見ると、どうも牽強付会の感が拭えない。
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2005年08月04日

"ヒロシマ"の風化≠核戦争の危機

 NHKのドキュメンタリー番組『クローズアップ現代』を見た。今日のテーマは『"ヒロシマ"が伝わらない』と題して、原爆の記憶が風化している現状を打開するための教育関係者の取り組みを紹介したもの。以下はNHKwebサイトによる番組紹介。
“ヒロシマ”が伝わらない

 今年NHKでは日米で3900人に対し、大規模な原爆意識調査をおこなった。「広島への原爆投下」を8月6日と答えられたのは全国で38%、広島でも74%にとどまり、被爆体験の風化が実証される結果となった。一方アメリカでは今も57%が原爆投下を「正しい判断だった」と答えている。核兵器廃絶と平和な世界の実現を訴えてきたヒロシマ。しかし、その目標達成の時は遠ざかっているのが現実だ。番組では平和教育の実践に悩む広島の教師と、原爆投下の是非をディベートするアメリカの教育現場などをルポ。"消えゆくヒロシマ"の実態を浮き彫りにするとともに、どうすれば被爆体験を継承できるのか、そのヒントを探っていく。
(NO.2124)

スタジオゲスト : 森滝 春子さん
    (平和団体共同代表)

 私は番組に出演していた米国人女子学生の意見にある種の衝撃を受けた。彼女は原爆に関する文献を見たうえで、その犠牲者20万人を「大したことがない」と断じていた。戦闘による死者ならば理解できるが、民間人の20万人という数は過去に例がなく、非戦闘員の殺傷を禁じるジュネーブ条約に明確に反する。

 米国民が原爆投下を正しいと感じているのは無理からぬことだろう。米国は君主制を経験していないため、愛国心によって人心を掌握することがどうしても必要になる。番組で紹介されたシカゴの平和博物館は原爆の被害者に関する展示を行っていたが、見学者は1日に数人だという。愛国心を育てるために原爆の被害者に関する事実を隠蔽するというよりは、国民がこれらの事実に触れたがらないと云うべきかも知れない。無論、日本人から見た意見(例えば、『原爆は米国が行った人体実験にして最大の戦争犯罪』といったような)を主張することを止めるべきではない。

 番組では日本における平和教育についても言及していたが、私は今までの平和教育のあり方に疑義を感じざるを得ない。『平和教育』と言えば原爆被害者の衝撃的な映像を見せ、それについて感想を書かせると言う手法が一般的だが、この方法は結論が固定されているという点でむしろ洗脳に近いといえる。小学生にこの種の映像を見せることは強烈な心的外傷を生み出すことにもなりかねず、集団心理の効果もあって『あらかじめ用意された結論』への誘導が行いやすい。

 さらに、映像の大半は『核兵器の恐ろしさ』『戦争の悲惨さ』を強調するもので、原爆投下に至るまでの検証が全く無い。このエントリでは大東亜戦争の是非に関する言及は避けるが、多くは『軍国主義日本の侵略に対して立ち上がる正義の国アメリカ』と言う虚構を無批判に繰り返すのみで、このような姿勢は到底科学的とは云い難い。なお誤解の無いように述べておくが、歴史学は人文『科学』の一分野である。

 原爆の記憶が風化していると言う現状は予測できないものではなく、むしろそれが顕在化するまで放置していた運動家の怠慢といえる。また、彼ら反核団体の主張は米国あるいは日本を標的としたものが多く、中国(中共)及びロシアの核戦略を批判した例は寡聞にして知らない。この種の不徹底は団体の政治的信条に立脚しているので、反核団体が一般の支持を得られない理由にもなっている。

 番組は「ヒロシマの記憶を語り継ぎ、核戦争という最悪の結末に向かいつつあり世界に対して警鐘を鳴らしていくべき」というお決まりの主張で幕を閉じる。

 現在に至るまで核保有国間の戦争が起こっていないのは相互確証破壊(MAD;Mutual Assured Destruction)の原則が確立しているからで、反核団体の運動による成果ではない。警戒すべきは中国やロシアからの濃縮ウランに代表される核燃料物質の拡散である。テロリストは領土のように明確な実態を持たないがゆえにMADが通用しない。核戦争の危機は途上国やテロリストへの核拡散によるものであり、原爆の記憶が風化しているからではない。反核団体の近視眼的な主張は、事象を正確に理解したうえで現実的な判断を行わねばならない国際政治の場にあっては、むしろ害あって益なしといえる。
posted by 火銛 at 21:45| Comment(3) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月02日

本日のお買い物(050802)

 今日は私の家から山を2つほど越えたところにあるBOOK-OFFに出向き、古本を漁っていた。私は日常の交通手段として自転車を利用しており、今回も例外なくそうしたのだが今回はそれを早計だったと評価せざるを得ない。というのも、期末試験に追われていて気づかなかったことだが、8月に入っただけあって日中はかなり暑い。そんな炎天下で険しい坂道を自転車に乗って走破した私の努力は賞賛されてしかるべきだ。

 などという御託は脇に措いて、本日の掘り出し物は次の通り。

1.ジョン・ダニング 『幻の特装本』 105円
2.曽村保信 『地政学入門』 250円
3.福島章 『犯罪心理学入門』 同上
4.野崎昭弘 『詭弁論理学』 同上

 1は作者が再デビューしてから2作目の本。前作『死の蔵書』で刑事を辞めた主人公が元同僚の依頼で盗まれた本を追っているうちに、過去の連続殺人事件に巻き込まれていく、というストーリー。暇つぶしのつもりで購入した前作が意外に面白かったので、105円という価格もあり購入。

 2は地政学という学問に興味があったため購入。地政学とは地理政治学の略で、地理的な位置関係が国際社会に与える影響を研究する学問。90年代初めにベストセラーになった荒巻義雄のSF戦争シミュレーション小説『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』に地政学が頻繁に登場するため、それ以来興味を持っていた。ちなみに、私がこれらの小説を読んでいたのは10〜15歳の頃だった。…どんな子供だ(苦笑)。

 3も2とほぼ同様の理由により購入。昨今の治安の悪化を論ずるには、まず犯罪者の心理を理解する必要があると考えている。犯罪心理学は人が犯罪に走るまでの心理状態を分析し、犯罪を未然に防ぐ、あるいは受刑者に対する教育に応用できる。犯罪者を擁護するつもりなど毛頭無いが、その数を減らすための政策を疎かにする訳にはいかないだろう。

 4は詭弁術を理解し、またこれに対抗するために購入したのだが、amazonのレビューによるとこの本を読んだだけで詭弁術が身についたり詭弁に対処できるわけではないとの事。少々期待外れだったが、論理学の基礎を勉強するためには使えると考えている。

 今日買った本はいずれも興味深い内容で早く読みたいのだが、図書館から借りた量子力学と核燃料サイクルに関する本が未読なのでしばらくはお預けである。
posted by 火銛 at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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