2005年06月01日

洋上の救急車

『US-1A』という飛行艇がある。
飛行艇というと映画『紅の豚』を思い出すが、映画に登場するような1人乗りではなく、海上自衛隊が使用する大型の救難飛行艇である。

救難飛行艇は、航空機が遭難した際の洋上捜索を主な任務としているが、急患の輸送も担当している。離島で急病人やけが人が発生した場合、船で運ぶには時間がかかりすぎるし、飛行機が着陸できる島は限られている。そこで飛行艇の出番である。飛行艇ならば滑走路は必要なく、しかも船より迅速に患者を運ぶことができる。

US-1A救難飛行艇の原型はPS-1という対潜飛行艇で、これを救難用に改修したものがUS-1であり、さらに機関出力を強化したものがUS-1Aである。製作は新明和工業という会社で、戦前は川西航空機という名前で航空機の製作に携わっており、当時の世界最高性能を誇った二式飛行艇(通称・二式大艇)を作ったことで有名である。

US-1Aは二式大艇の流れを汲む優秀な飛行艇で、戦後に航空機の開発を禁じられたために大きく後れを取った日本の航空業界において輝かしい性能を誇っている。というのも、3mの高波の中を時速100km以下で離着水できる飛行艇は他になく、これは二式大艇と同じく現時点で世界最高の性能である。

そこで新明和工業ではUS-1Aに各種の改良を加えたUS-1A改(海自で採用されれば名称はUS-2となる予定である)を開発し、実用試験を行っており、消防飛行艇としての活用や輸出も検討されているという。よく山火事のニュース映像でヘリコプターがバケツをぶら下げて消火活動をしているのを目にするが、ヘリコプターが運べる水の量は平均して1トン程度である。US-2を消防飛行艇として運用した場合、15トンの水を運ぶことができる。つまりバケツと風呂桶ほどの差があるわけで、実用化が待たれるところである。

また、輸出に関してもすでにブラジルやインドネシアから注文が来ているそうで、日本の技術を役に立てることができるのは良いことだと思うし、今までは武器輸出三原則の縛りもあってなかなか実現しなかっただけに感慨もひとしおである。ほかにも従来は船で行くしかなかった小笠原諸島への定期便を運航させるといった旅客用としての活用法もあるので、積極的に推進すべきだと思う。

なお、新明和の飛行艇開発史については『帰ってきた二式大艇』という本に詳しく掲載されているので、興味がある方にはぜひ読んでいただきたい。


posted by 火銛 at 23:02| Comment(2) | TrackBack(1) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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