2005年06月30日

太陽をこの手に(前編)


熱核融合実験炉本体の建設地、仏・カダラッシュに決定(読売新聞)

 【モスクワ=五十嵐孫一】太陽で起きている核融合反応を人工的に起こし、新しいエネルギー源を開発する国際熱核融合実験炉(ITER)計画に参加する6か国・地域の閣僚級会合が28日、モスクワで開かれ、ITER本体の建設地がフランスのカダラッシュに決定した。

 欧州連合(EU)と誘致を競ってきた日本は断念した見返りとして、EUとの折半出資による関連施設の建設や、本部組織となる「ITER機構」の機構長ポストなどの優遇措置を得た。

 関連施設の建設地は青森県六ヶ所村が有力だ。1985年の米ソ首脳会談で合意されて以来20年を経て、ようやくITERは現実化へ動き出す。

 会合に参加した中山文部科学相は共同記者会見で、「日本は準ホスト国として、欧州と並ぶ重要な国際研究拠点として、核融合開発に貢献できる」と述べ、関連施設誘致の意義を強調した。

 6者の共同宣言は、誘致できた国とできなかった国の役割分担についての日欧合意に「留意する」として、日欧合意文書を添付した。添付文書は、日欧がそれぞれ出資して日本に関連施設を建設することを明記。関連施設の候補として、遠隔実験研究センター、次世代炉(原型炉)設計研究センターなどを例示し、日本が選択して建設するとしている。

 関連施設について、文部科学省の坂田東一研究開発局長は28日、日本がITER建設地の誘致先として青森県六ヶ所村を推してきた経緯を踏まえ、「まずは青森県と相談し、県の意向を踏まえて対応する」と述べた。県側が関連施設の建設を求めるのは確実なことから、建設地は六ヶ所村となる公算が大きい。


ITERは簡単に言えば、『夢のエネルギー』とされている核融合発電の実験装置である。ドーナツ型の炉心の中で、5億度に加熱した水素原子同士(正確にはその同位体である重水素や三重水素)を衝突させてエネルギーを生み出す。しかし、その実現には多くの技術的困難を伴う。

一定量の濃縮ウランがあれば勝手に反応が進んでくれる核分裂と違い、核融合はまず反応を起こさせるのが極めて難しい。光速に近い速度で水素を衝突させないと核融合は起こらないからだ。一般的に、気体を加熱すると気体分子の速度は上がるので、分子の速度を速くするには気体を加熱してやればよい。

また、燃料である水素は高温高圧のプラズマ状態で存在しているので、壁と接することが出来ない。そこでITERでは外側から磁力をかけることによってプラズマをドーナツ型の中心部に浮かせて、壁が溶けるのを防いでいる。このプラズマを安定に制御することが核融合炉を実用化するための第一の課題である。

加えて、反応の過程で発生する中性子が炉の内壁と衝突することで、壁がもろくなってしまうという問題がある。この中性子に耐える、あるいは中性子を吸収する壁を作ることが第二の課題といえる。

ITER本体の建設にこれほど拘る理由は、日仏ともに自国のエネルギー安全保障のためである。石油と比べればまだ偏在性は小さいものの取れる場所が限定されるウランと違い,重水素は海水から採取することができる。つまり、海さえあればほぼ無尽蔵のエネルギーを手にするに等しい。なお、ITER参加国はすべて海を持つ。

(続く)
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2005年06月27日

今度の夕食は鯨


IWC総会:捕鯨支持国と反捕鯨国の溝埋まらず(毎日新聞)

 韓国・蔚山(ウルサン)で開かれていた国際捕鯨委員会(IWC)年次総会は最終日の24日、クジラを減らさずに商業捕鯨する約束事をまとめた「改定管理制度」について、反捕鯨国側が提案した「完成に向けた議論を促進する」との決議案を採択して閉幕した。日本など捕鯨支持国は「過去の議論の蒸し返しにつながる」と棄権。今年も捕鯨支持国と反捕鯨国の溝は埋まらなかった。次回総会は来年6月、カリブ海のセントクリストファー・ネビスで開かれる。

 日本が提案した「ミンククジラの沿岸商業捕鯨の実施」などは、いずれも可決に必要な4分の3に届かなかった。一方、「採決の無記名投票化」提案では、可決ラインの過半数まで、あと一歩の3票差にまで迫った。

 捕鯨支持国と反捕鯨国の加盟数の差は、80年代前半には20前後あった。しかし、途上国を中心にした日本の積極的な支持要請が実り、今年は「欠席国を含めれば、勢力は逆転した」(水産庁)という。

 日本は「一部の過激な自然保護団体などを恐れ、意見を言えない国が多い」とみている。採決を無記名投票化すれば、捕鯨支持国が急増する可能性もあると、来年以降に商業捕鯨再開への期待をつないだ。


先日のエントリの続きになるが、反捕鯨国が日本に鯨を捕らせない理由はもう一つある。それは自国の食肉産業を保護するためだ。特に米国や豪州がそうだが、彼らにとって日本は購買力が有り余る魅力的な市場なのだろう。そこで、日本に肉を買わせる為に鯨を捕らないよう圧力をかけるというわけだ。

自国の産業を保護することは否定すべきでないが、それと同時に自国だけではなく、相手の文化を尊重することもまた重視されるべきではないだろうか。例えば米国やカナダに住む先住民には一定量の捕鯨が認められている。これは彼ら先住民の生活のためだそうだが、日本にも捕鯨で生計を立てていた人々は多くいる。選択肢は両方を認めるか、両方を認めないかの二つに一つであり、ダブルスタンダード(日本語では『二枚舌』)を許すわけにはいかない。

今年の総会では特に進展が見られなかったが、今後には期待してよいと思う。大洋州諸国など捕鯨支持国は以前より確実に増えているので、5年後くらいには商業捕鯨が解禁される日が来るだろう。
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2005年06月20日

反捕鯨国の理不尽


豪、NZ、英国が日本の捕鯨拡大案を非難=IWC総会開幕(時事通信)

【蔚山(韓国)20日】国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会が20日、韓国の蔚山(ウルサン)で始まり、オーストラリア、ニュージーランド、英国の反捕鯨3カ国は南極海で調査捕鯨を拡大するとの日本提案に強い反対を表明した。(写真は豪州のシドニー湾に現れたザトウクジラ)

日本は同日、ミンククジラの捕獲枠を現在の2倍の約850頭に拡大し、ナガスクジラとザトウクジラについても捕獲数を増やす方針だとIWCに通告したことを明らかにした。調査捕鯨は約20年前の捕鯨モラトリアム(一時中止)の特別条項で認められているが、捕鯨反対派は、調査捕鯨を隠れミノにした商業捕鯨が行われていると見ていた。日本、ノルウェーおよびアイスランドはモラトリアムの廃止を望んでいる。

豪州のキャンベル環境相は、日本の調査捕鯨計画は暴挙だと決めつけ、投票で決めることになれば、「捕鯨の続行と拡大を望む諸国と、捕鯨を歴史の一こまにしようとする我々諸国との衝突になるだろう」と述べた。ニュージーランドのカーター環境保護相は、同国は南極海のクジラの虐殺を倍増させる日本の提案を全面的に拒否すると、歯に衣着せぬ表現で強調し、「調査」とは名ばかりだと非難した。

英国のブラッドショー漁業担当相は「(殺される)クジラに与えられる苦痛は全く受け入れられない。クジラを殺す人道的な方法はない。我々がクジラ保護政策を後退させれば、将来の世代は今回の会議を許さないだろう」と述べた。〔AFP=時事〕


国際捕鯨委員会、年次総会で無記名投票案を否決

 [蔚山(韓国) 20日 ロイター] 国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会で20日、日本が提案した無記名投票案が賛成27、反対30で否決された。

 同案には、捕鯨支持国が反捕鯨国を抑える狙いがある。

 反捕鯨国は、新規加盟したガンビア、トーゴ、ナウルの3カ国が採決に参加しておらず、捕鯨支持に回る可能性があることを指摘し、勝利宣言は時期尚早との認識を示した。

 反捕鯨勢力の世界自然保護基金(WWF)関係者は、「採決結果に安心したが、(総会が閉幕する)今週末までの新たな採決で形勢が逆転するかも知れない」とコメントしている。


毎年この時期になると気になるのは、IWC総会の動向だ。捕鯨推進派と反対派の溝は深まるばかりだが、反対派の主張は相変わらず『暴挙』とか『虐殺』といった感情的な表現で日本を悪者にしようとしている。私は食糧安全保障の観点から、商業捕鯨の再開を強く支持している。食料自給率の少ないわが国にあって、鯨は貴重なタンパク源だからだ。無論、乱獲によって頭数が減らないように一定の制限が加えられるべきとは思うが。

鯨は栄養があり、肉が大量に取れ、何より旨い。しかも脂身が少ないので、食べ過ぎてもあまり太らない。昨年に運良く食べることができたのだが、程よい柔らかさでコクがあり、大変に美味しく頂いた。

ほかの地域でも同じだろうが、日本近海の鯨が減少した原因は19世紀に進出してきた欧米諸国による乱獲が原因である。彼らはろうそくの原料である鯨油のためだけに鯨を取り、残りは捨ててしまう。逆に日本では鯨体のほとんど全てを余すところ無く利用し、さらに神様として祀っている。余談だが、ペリーが日本を開国させたのも捕鯨の中継基地として適当だったためだ。

欧米諸国が捕鯨をしなくなったのは、鯨油が石油に取って代わられ採算が合わなくなったからだ。引用記事でも英国の代表が鯨に対して与える苦痛を問題にしているが、ならば彼らが(我々もだが)日頃食べている牛や豚はどうか。牛や豚は人間によって食べられるために生まれ、育ち、そして殺される。自らの運命を知らない(=本質的に自由な)鯨のほうがまだましだろう。

欧米人が鯨を食べないのは彼らの宗教観や文化に基づいているそうだが、それならば日本の伝統文化である捕鯨を認めて然るべきだ。02年に開催された日韓W杯の時も欧米人は韓国の犬食を問題にしたそうだが、お互いに食文化の違いを認めることが何故できないのか。彼らに言わせれば犬や鯨を食べることは動物虐待だそうだが、ここで『カタツムリを食べる欧米人に言われたくはない』と主張するのはさすがに憚られる。

ともあれ、1日も早い商業捕鯨の再開を望む。

参考サイト:日本捕鯨協会
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2005年06月14日

高校爆弾事件に思う

ネット参考に自宅で製造か くぎで威力、殺傷能力検討(共同通信)

山口県光市の県立光高校で授業中の教室に火薬入りの瓶が投げ込まれ爆発し、生徒58人がけがをした事件で、県警は11日、傷害の現行犯で逮捕した同校3年2組の男子生徒(18)がインターネットなどを参考に自宅で爆発物を製造したとの見方を強めた。

爆発物は透明のジュース瓶に花火などをほぐした火薬を入れて、導火線に火を付ける簡単な構造。長さ1−2センチの小さいくぎ数十本や別の金属を詰め込んで威力を高めていたとみられ、県警は爆発物の殺傷能力を詳しく調べるなどして殺人未遂容疑での立件も検討している。

県警は男子生徒の自宅から段ボール数箱分を押収。押収物の分析を進めるとともに、爆発物を学校に持ち込んだ経緯を調べている。


小瓶程度のサイズの爆弾の場合は爆風がさほど強くならないためにねじ、釘、ベアリングなどを入れて殺傷能力を上げる方法はよく使われる。クレイモア地雷などがそのよい例だろう。火薬の入手経路も花火というごく常識的なものであり、威力を検証するために海岸で実験を行っていたという。間違いなくこの少年は計画的に犯行を行っていた。

しかし、いじめられた恨みを晴らすために相手に爆弾を投げつけるというのは短絡的に過ぎる行為だ。死者が出なかったのは不幸中の幸いにしても、無関係な多数の怪我人が出ている。

『どんな理由があろうと殺人は許されない』などという綺麗事を主張するつもりはないが、無関係な他人を巻き込んでする復讐に正当性はない。

私にも似たような経験があるので彼の気持ちが理解できないことはないが、なぜもっと穏健な方法を取らなかったのか。爆弾を作るくらいの実行力があるならば、合法的に相手の面目をつぶす方法を考えるべきだった。

また、この事件を契機に商店での花火の販売を規制するとか、ネットでの情報公開を規制するといった方向に世論が傾くことを懸念している。問題の本質はそうした材料の存在ではなく、なぜ彼がそれらを悪用するに至ったかということである。回転ドア事件や遊具での死亡事故など前例が数多あるだけにこの点を非常に憂慮している。
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2005年06月08日

不審船を止めるには

韓国漁船による違法操業に端を発する日本海での事件は結局、日本が折れる形で決着した。すでに多くの方が意見を述べられているが、私もここで主張をしておきたいと思う。

まず、韓国海洋警察および船員の対応は到底認められるものではない。海上保安庁の停船命令を無視して逃走し、後になって『怪我をしたから謝罪と賠償を要求する』とは笑止千万である。漁船側は違法操業をしていないと主張しているそうだが、もしそうならばなぜ素直に命令に従わなかったのか。自分たちは何も悪いことをしていないと考えるのであれば当然従うべきだろう。

だが、彼らももしかしたら被害者であるのかもしれない。メディアによって喧伝される反日的な論評に接し続けるうち、日本人に対する不信が増幅していったとも考えられる。だからといって看過できるものでもないが。国際社会において『沈黙は金』ではないので、主張すべきことは躊躇うこと無くしなければならない。

いずれにしても、これから先は中国や韓国の海洋進出に伴い、海上保安庁の重要性が増してくるだろう。その時に備えて今から海保の装備と人員を整えておく必要があるが、予算の制約で物量作戦は望めないので無い知恵を絞って逃走する不審船の脚を止めるためのアイデアを考えてみた。

その1:水に触れると膨らむ高分子を散布
相手の前方に回りこみ、ゼラチン質もしくは繊維系の高分子を散布して相手の船足を止める。巡視艇からでは相手の進行方向によって自船が巻き込まれかねないので空中散布とする。海洋汚染が心配だが、有害となる場合は原油回収用のオイルフェンスを使用する。

その2:無弾頭魚雷で舵を破壊
高コスト。外して沈めたら外交問題。よって没。

その3:潜水艦で脅す
効果はありそうだが、海保に潜水艦はない。また、意図的に誇張された報道が反日活動に利用される恐れがある。よって没。

いずれも現実的な案とは言いがたく、可能性があるのはKWATのblog三号一型で述べられている余剰のP-3C対潜哨戒機の流用くらいだろうか。これは新型機導入のために余剰となる機体を流用するもので、そのまま運用してもよいし、レーダーを載せ代えても新造するよりは安く済む。

日本においては安全保障と名のつく政策が疎かにされた結果、国益を害し諸外国に侮られる状況が続いているが、この辺で終わりにしたいものだ。

お詫び
posted by 火銛 at 23:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月01日

洋上の救急車

『US-1A』という飛行艇がある。
飛行艇というと映画『紅の豚』を思い出すが、映画に登場するような1人乗りではなく、海上自衛隊が使用する大型の救難飛行艇である。

救難飛行艇は、航空機が遭難した際の洋上捜索を主な任務としているが、急患の輸送も担当している。離島で急病人やけが人が発生した場合、船で運ぶには時間がかかりすぎるし、飛行機が着陸できる島は限られている。そこで飛行艇の出番である。飛行艇ならば滑走路は必要なく、しかも船より迅速に患者を運ぶことができる。

US-1A救難飛行艇の原型はPS-1という対潜飛行艇で、これを救難用に改修したものがUS-1であり、さらに機関出力を強化したものがUS-1Aである。製作は新明和工業という会社で、戦前は川西航空機という名前で航空機の製作に携わっており、当時の世界最高性能を誇った二式飛行艇(通称・二式大艇)を作ったことで有名である。

US-1Aは二式大艇の流れを汲む優秀な飛行艇で、戦後に航空機の開発を禁じられたために大きく後れを取った日本の航空業界において輝かしい性能を誇っている。というのも、3mの高波の中を時速100km以下で離着水できる飛行艇は他になく、これは二式大艇と同じく現時点で世界最高の性能である。

そこで新明和工業ではUS-1Aに各種の改良を加えたUS-1A改(海自で採用されれば名称はUS-2となる予定である)を開発し、実用試験を行っており、消防飛行艇としての活用や輸出も検討されているという。よく山火事のニュース映像でヘリコプターがバケツをぶら下げて消火活動をしているのを目にするが、ヘリコプターが運べる水の量は平均して1トン程度である。US-2を消防飛行艇として運用した場合、15トンの水を運ぶことができる。つまりバケツと風呂桶ほどの差があるわけで、実用化が待たれるところである。

また、輸出に関してもすでにブラジルやインドネシアから注文が来ているそうで、日本の技術を役に立てることができるのは良いことだと思うし、今までは武器輸出三原則の縛りもあってなかなか実現しなかっただけに感慨もひとしおである。ほかにも従来は船で行くしかなかった小笠原諸島への定期便を運航させるといった旅客用としての活用法もあるので、積極的に推進すべきだと思う。

なお、新明和の飛行艇開発史については『帰ってきた二式大艇』という本に詳しく掲載されているので、興味がある方にはぜひ読んでいただきたい。


posted by 火銛 at 23:02| Comment(2) | TrackBack(1) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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